東京地方裁判所 平成4年(ヲ)17号 決定 1992年2月20日
異議申立人 山田成
<ほか二名>
異議申立人ら代理人弁護士 佐々木正義
主文
本件異議申立を却下する。
申立費用は異議申立人らの負担とする。
理由
一 申立の内容
異議申立人らは、建物の占有移転禁止・執行官保管の仮処分(当庁平成三年(ヨ)第四六〇五号)の債権者らである。
異議申立人らは、この仮処分命令の送達を平成四年一月一六日に受け、同月一七日にその執行の申立をした。執行官はこの申立に基づき、同月二四日に現場に臨場したが、債務者が目的建物を占有していることが認定できないこと等の事由により、執行を中止した。
そして執行官は、平成四年二月四日、上記仮処分命令が債務者に送達されてから二週間が経過したことを理由に、民事保全法四三条二項を適用して、その執行の申立を却下した。
異議申立人らは、この却下の執行処分に対して、本件執行異議を申し立てたものである。
二 当裁判所が本件異議申立を却下する理由
当裁判所は、本件異議申立は理由がなく、却下すべきものと判断して、主文のとおり決定する。そのように判断した理由は以下のとおりである。
(一) 民事保全法四三条二項は、「保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から二週間を経過したときは、これをしてはならない。」と定める。これは、その期間内に執行が完了することまで要求するものではないが、その期間内に少なくとも執行の着手がなされることは必要とする趣旨である。
(二) しかし、その「執行の着手」の意味を考えるにあたっては、次のようなことを考慮しておかなければならない。すなわち、執行期間を二週間に区切った趣旨から考えて、「着手さえあれば、完了までに長期間かかってもよい。」というわけにはいかず、ある程度短い期間内に執行の完了する見込が必要である。逆に言えば、二週間以内に執行が完了しなくても着手さえあればよいというのは、着手の段階に至れば、その後ある程度短い期間内に執行が完了すると見込まれるからなのである。
このように考えると、執行の着手があったというためには、それまでに行われた行為とその後に予定されている行為との間に連続性が認められるのでなければならない。
(三) 本件のような建物の占有移転禁止の仮処分においては、占有の認定に至った以後は、執行の着手があったと認めてよい。しかしその前の、占有の調査をしている段階においては、その後ある程度短い期間内に執行が完了する見込があるとはいえず、その後に予定されている行為との間に連続性はない。従って、この段階では未だ執行の着手があったとはいえない。
(四) また本件において、占有の認定ができないとした執行官の判断に誤りがあったことを認めるに足りる資料はない。
(裁判官 村上正敏)